おねしょ(夜尿症)を解決する方法

おねしょを解決する方法

生活習慣の改善

  • 寝る前の3時間は水分の摂取量を減らそう
  • 寝る直前にトイレをすませよう
  • 朝起きたらすぐにトイレに行く習慣をつくろう
  • 毎日の排便の習慣をつくろう
  • 夕食を早めに食べて、早寝・早起きをしよう

ご自宅で出来る確認事項

  • おむつの就寝前後の重さの差から、夜間の尿量を量ってみよう
  • 我慢おしっこや排尿日誌で、1回の膀胱に貯めれる容量を量ってみよう

ご家族にできること

  • 身体を冷やさず、静かな場所でぐっすり安眠できるように環境を整えよう
  • お子さんも親御さんも、おおらかに楽しんで生活しよう

 

泌尿器科をしていると、周りの方から子どもの「おねしょ」について相談をいただく機会が度々あります。自分自身も子どもの夜のおもらしや日々のトイレの習慣をどうしたらいいか考えてきました。自分の聞いた話や経験からお伝えします。

 

まず皆さんがあまりご存知ないのが、「飲んだ水分は約3時間以内に尿になる」という事です。寝る直前に水分を飲むと、寝ている間にその水分がおよそ同量の尿になります。寝る前に沢山水分を飲むと、寝ている間に尿が作られて膀胱がパンパンになり、ある程度以上の量になると膀胱に貯めきれず漏らしてしまい、おねしょになります。

 

このタイプのおねしょを夜間多尿型といっています。朝にはおむつがポンポン、シーツまでぐっしょり濡れる、尿量が多いので大人の大容量おむつを使っている、などが典型例です。お話を聴くと、「たしかに、うちの子は夕食後以降に水分を沢山飲んでます!」とか「風呂上りは飲ませた方がいいと思って沢山与えてました」とお聞きします。

 

飲水制限をして夜間に作られる尿を減らすことでこのタイプのおねしょは解決します。寝る前の2時間、できれば3時間は水分を控える(多くてコップ1杯程度まで)というのは大変有効です。喉が渇いたときは、氷をなめることで水分摂取量を抑えることができます。

 

食事自体にも水分が多く含まれていますので、なるべく夕食は早く終わらせたいです。具体的には、夕食を就寝の2-3時間前までに済ませるのが理想です。

 

膀胱をなるべく空っぽにして、就寝中に沢山の尿を貯めてもらうために、寝る直前にトイレをすませましょう。そして、朝目覚めてもトイレにいかずに、ベッドでゆっくりしていたらおむつに漏れちゃったということもあります。朝起きて一番のトイレの習慣も大切です。

 

私の実体験で、子どもがまず朝一番にまず起きてトイレに行く習慣がつくれずに悩みました。トイレに数字の書かれた表を貼って、うまく朝トイレできる度に1個づつシールを貼っていく方法を試しました。カレンダーなどにシールを貼ることでも代用できるように思います。

 

朝のおむつはポンポンよというときは、夜間の尿量を量ってみましょう。夜間の尿量は、夜間に漏れた尿量と朝一番の尿量の合計になります。夜間に漏れた尿量は、就寝前と起床後のおむつの重さの差から計算することができます。例えば、未使用のおむつが100gで、朝起きたときのおむつが300gあったら、300(g)100(g)=200(g)、でおよそ漏れた量が200mlと考えます。朝一番のトイレで尿量が150mlでた時は、夜間尿量の合計は 200(ml) + 150(ml) =350(ml)となります。この夜間の尿量が、お子さんの最大に貯められる膀胱容量を超えている場合、お子さんが夜に尿を漏らしてしまうと考えます。

 

まず一度、夜間の尿量を測って記録してみましょう。記録に適した日誌があります。

【「こども日誌」はこちら(協和キリン)】

 

ちなみに夜間多尿は、夜間の尿量が1時間毎に「体重(kg)×1(ml)」より多い場合をいいます。30kgのお子さんが8時間就寝したとき、30(kg)×1(ml)×8(時間)=240mlとなり、一晩で240ml 以上の尿があれば夜間多尿になっていると考えます。もし就寝前の飲水量を気をつけても夜間の尿量が多い時は、バゾプレッシンの分泌不全の可能性があります。バゾプレッシンは4歳5歳ころから分泌が盛んになってくる抗利尿ホルモンです。昼は少なく夜に多く産生され、夜間の尿を濃縮させて量を減らす働きをします。もしこのホルモンの産生がまだ不十分な場合は、デスモプレシン製剤を飲む治療が大変有効です。

 

水分摂取に気をつけていても夜間多尿があれば、デスモプレシン製剤が役立ちます。具体的には、寝る前に薬剤「ミニリンメルト錠」を内服します。この薬剤はバゾプレッシンを元に作られたデスモプレシン製剤で、口の中で崩壊して吸収されます。内服直後にうがいをしないように注意しましょう。内服前に水を多く飲んでいなければ、副作用なく安心して飲んでいただけます。内服だけれなく、点鼻の薬剤もあります。10歳頃には大人同様のバゾプレッシンの分泌になりますので、おいおいは薬剤は不要になってきますので心配は不要です。

【ミニリンメルトのパンフレットはこちら】

 

 

このほかに膀胱型のおねしょというものがあります。膀胱が貯められる量が少ないために、それ以上の夜間尿が作られると漏れてしまうというおねしょです。この場合は膀胱容量を増やすことでおねしょになる頻度を減らせます。

 

まず、お子さんの膀胱容量が年齢相応か確認しましょう。膀胱の容量は、日中になるべく尿を我慢させたときの1回の尿量(「我慢おしっこ」の量)を量ることで分かります。

 

「我慢おしっこ」をすることが難しければ、昼間に排尿日誌などつけて、複数回の1回排尿量を量ることで平均的なに膀胱容量が分かります。膀胱容量は「(年齢 + 2)×25(ml)」あれば年齢相応と考えられます。7歳だと225ml、8歳だと250ml、9歳だと275mlとなり、これより少ない時はなるべく日中に尿を我慢して、徐々に膀胱に貯められる量を増やしていく方向で治療を行います。

 

薬剤の抗コリン薬は膀胱容量を増やすには有効ですし、おねしょアラーム治療も結果的に膀胱容量を増やしていくと言われています。

 

夜間はおねしょアラームとは、寝る時におむつにアラーム装置をつけて、尿が漏れるとアラームが鳴るため覚醒するという方法です。このおねしょアラームは試しに買っても「うちの子に合わなかった」なんてときは勿体ない!ので、当院でも貸出用のおねしょアラームを準備します。お気軽にお問合せください。

 

便秘で肛門に便がたまっていると、その横に位置している膀胱は便塊で圧迫されて尿量がたまりません。子どもの骨盤は小さいので、たかが便秘と思うかもしれませんが、便がダイレクトに膀胱を圧迫して尿がたまるスペースを減らします。毎日適切な硬さのバナナ便がでていますか?便秘があれば、便秘を解消しましょう。毎日すっきり排便がでる生活習慣から作っていきます。食物繊維を増やした食事や、適切な運動習慣で腹筋をつけることから始めるのがお勧めです。

 

大人でも外出の時間が多くて緊張しがちだったという日には便通が遠のいたりします。お子さんも同じです。精神的な緊張も便秘の原因になります。外出の多い日は緊張が続くので便がでにくいですし、慢性的に親御さんが緊張して生活しているいるときはお子さんは緊張環境に置かれ便通が遠のきます。こういう時はリラックスしていくことで便通も一緒によくなっていきます。

 

また緊張があると頻尿にもなり、頻尿だと1回に貯める量が減るので膀胱が伸びません。緊張気味のお子さんには、まずはリラックスできる環境を整えていきます。漢方薬がお子さんのイライラや不安に効果を発揮します。東洋医学では、お母さんのエネルギー状態はお子さんに反映されると言われており、ときにお子さんとお母さんともに同じ種類の漢方薬を飲むという「母子同服」も勧められています。

 

あと気をつけることがあるとすれば、就寝環境です。親御さんの夜間の活動音やライトの明るさで、実は同じ部屋で寝ている子もどが安眠できていないこともありますのでご注意ください。暗闇で静かに寝れるような環境が最適です。眠りが深くなると子どもの精神状態が安定し、明け方には浅い眠りになりトイレに起きれるようになることもあります。身体が冷えると膀胱が敏感になり収縮しやすくなるので、夜間は子どもの体が冷えないように工夫することも有効です。お子さんの慢性的な体の冷えの改善や安眠に漢方薬が効果を発揮します。

 

このほかに、子どもの精神的身体的なストレスを減らすことも大切です。「おねしょ」は病気ではありません。大人になっておねしょで悩んでいる人っていないですよね。だれでも必ずおねしょを卒業していく過程にいます。お子さんを、「おねしょしちゃ恥ずかしいのよ」と追い立てず、おおらかな気持ちで見守ってください。高校生になってもおねしょしていた人も知っていますが、大人になってみれば、周りの人となんら違いません。有名な偉人でも大きくなるまでおねしょしていたエピソードを持つ人はいます。時として親御さんの「なんとかしなきゃ」の必死さが子どもを追い詰めてしまうこともあります。まずは、ここに挙げた内容を気軽に実践してみてください。それでも解決せずに困ったなというときは、一度ご相談ください。お子さんはちょっとしたことで驚くほどの成長を遂げられます。無理せずできる事から一つづつ、一緒に取組んでいきましょう。

 

もし中高生など身体が大きくなったお子さんにおねしょがある場合、おねしょがあるのは「心のメッセージ」を発してると考えてください。こういった場合のおねしょのメッセージは大変多面的です。御さんが子どもに精神的に無理をさせてないか、子どもを過剰にコントロールしていないかなど、一度ご自身とお子さんとの関係を落ち着いて振り返ってみてください。時に、お子さんに「親にまだ甘えたい」という隠れた気持ちがある、その気持ちが潜在的に作用しておねしょが卒業できないこともあります。「お気に入りのベッドを買って寝るようになったら、ベッドを汚したくないのでピタッと漏らさなくなった」なんてこともあり、きっかけがあったり、心の負荷が取り除かれればタッと止まります。おねしょの発する心のサインについて、物事のすぐには見えない部分も含めて、広い視点で捉えていきましょう。心のサインというのは放置しててたら、アラートがドンドン大きくなり、おねしょ以外のサインの出現につながります。お子さんの心のSOSに取組むタイミングは今です。これがきっかけで子供さんとの関係を見つめ直し、振り返ってみれば「前よりずっといい関係になったなあ」といえるように皆の心が安定する方向に歩んでいきましょう。ご自身では気が付きにくいこともあるかと思います。一人で抱え込まずに、悩んだらご相談ください。

 

私自身は、「自分にも子どもにも優しく」をモットーにしています。うまく行かないときはまず自分に無理させず自分を癒して、おおらかに楽しんで毎日を穏やかに生活したいと思っています。

 

もし、常に昼も尿漏れが続く場合は、生まれつきの身体の構造から尿漏れしている可能性が考えられます。まずは一度、医療機関にご相談ください。

 

2019年6月14日記載

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